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診療看護部

1.NP/RANとは

診療看護師(NP:Nurse Practitioner)
看護師として5年以上の経験を積んだ上で、2年間の大学院修士課程で医学的知識や技能の教育を受けた看護師。厚生労働省が認定している特定行為(21区分38行為)の実践のみならず、医師からの直接的指示により診療行為が実践できるように大学院で教育を受ける。

特定行為看護師(RAN:Registerd Action Nurse)
厚生労働省が認定している特定行為(21区分38行為)を修了した看護師。

NPと特定行為看護師の違い
いずれも21区分38行為の特定行為研修修了者であるが、NPは2年間の大学院修士課程を修了したうえで日本NP教育大学院協議会が実施するNP資格認定試験に合格しなければならない

2.統括責任者からのご挨拶

藤谷茂樹 診療看護師統括責任者からのご挨拶

サンプル画像
 診療看護師プログラムを2017年に開始して、5年が経過します。2023年度には、11名が診療看護師を迎え、日本国内でも最大規模の診療看護師大学院研修修了後のプログラムとなります。私たちのプログラムの特徴は、研修修了後、2年の卒後プログラムを経験していただき、院内での看護の心を持ったジェネラリストを目指しています。ジェネラリストの一環として、それぞれサブスペシャリティーに進むこともありますが、しっかりとした基本を学んでから進路を決めていただくようにしていますので、どの専門科に配属されたとしても適応ができるようになっています。大きな特徴として、診療看護師のネットワークを構築し、医療安全、働き方改革に向けての協力体制等に注力しています。その1つとして、院内急変対応システムに全診療看護師が参加していただき、早期警戒スコアシステムの高リスク患者に関しては、診療看護師が病棟分担して実際に観察をしてもらうようにしています。このことにより、診療看護師同士の仲間意識、そして院内医療安全に貢献しているという横断的な院内貢献をすることで病院からも高い評価を受けています。そして、もう一つは、PICCという末梢中心静脈カテーテル挿入を、認証制度を導入し、診療看護師で手技を受け持っていただくということをしています。このようなプロジェクトをしながら、日常の診療、看護+研究にも積極的に参加をしていただき、大学病院ならではの診療看護師プログラムを構築しています。

3.当院でのNP研修

 聖マリアンナ医科大学病院では2017年から診療看護師(NP)の卒後研修を開始しました。2022年に第6期生が入職し、2022年4月度時点で総勢36名のNPが大学病院および関連病院で働いています。
当院のNP卒後研修は、研修開始当初は救命センター等クリティカル領域を中心とした研修プログラムでしたが、現在では小児領域や一般内科でも卒後研修を開始しており、法人全体でNPが活躍する領域を拡大しているところです。
入職後は2-3ヶ月程度の看護部研修を行い、その後は3ヶ月毎に各診療科をローテーションする研修プログラムです。(下図参照)
大学病院本院で研修する診療科は救命科、循環器内科、脳神経外科、麻酔科、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器内科、代謝内科、腎臓内科、小児科、NICUなどです。その他、研修プログラムの一環として、関連病院の横浜市西部病院救命科や多摩病院総合診療内科にもローテーションします。
研修プログラムは2年間で修了し、その後は各診療科に配属されます。ローテーションや配属は、個人の希望も考慮しながら決定します。

 研修プログラム一例
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
1年目
看護部研修
本 院 救命センター
本 院 脳神経外科
多摩病院 総合診療内科
2年目
本 院 呼吸器内科
本 院 心臓血管外科
本 院 循環器内科
西部病院 救命センター

4.研修生の実際

【救命センターでの研修(2017年):NP1期 小波本直也(こはもと なおや)】

 救命救急センターでは指導医師のもと研修を行っており、研修医の先生方と一緒に三次救急患者対応と治療管理やICU・HCUの入院患者さんを担当しています。毎朝ICU・HCUで行われる回診では、患者の状態について臓器等のシステムごとに問題点を挙げ、アセスメント評価を行い治療へつなげるプレゼンテーションが行われています。医師だけでなく診療看護師も担当患者のプレゼンテーションを行い、プレゼンテーションのトレーニングや治療管理等について学ぶ機会をいただいています。 
今回は、当院診療看護師研修責任者である藤谷茂樹先生(救急医学教授)よりマンツーマンで抗菌薬選択のためのグラム染色の方法を1からご指導を頂きました。
グラム染色とは、喀痰などの検体にいる細菌を紫色(グラム陽性)と赤色(グラム陰性)に染め分けて、菌の染まった色や菌の形をみて感染症の起炎菌を考える検査です。この検査は感染症の治療において迅速に最適な抗菌薬を選択・使用するために非常に重要な意味をもちます。
看護師が菌を判断して抗菌薬を選択して使用の判断をしていいの?と思われた方も多いのではないでしょうか?
実は看護師特定行為21区分38行為の中に「抗菌薬の臨時の投与」がありその特定行為を行う診療看護師は、グラム染色を用いて抗菌薬選択ができる能力が求められます。
藤谷茂樹先生は、米国集中治療学専門医(FCCM)、米国内科学会専門医(FACP)、米国感染症学専門医をお持ちで、このような偉大な先生から直接グラム染色や感染症診療についてのご指導を受けられるだけなく、救急集中治療における重症患者の全身管理、総合内科の病棟管理まですべてご指導をいただける贅沢な研修施設は他にはないでしょう。 
私は診療看護師として、患者さんの状態や今後の治療方針等の情報をもとに担当看護師やそのチームと情報を共有し日々の看護ケアへとつなげられるよう心がけています。
患者さんの近くにいる看護師が持っている情報の中から診断や治療有用なものだけでなく、患者さんの「その人らしさ」を看護の視点でしっかりとキャッチし、医師や多職種と連携・協働できる「チーム医療の架け橋」となれるよう日々研修を行っています。
診療看護師は、医師の「診る」と看護師の「看る」の2つ視点から、患者さんの受ける医療がタイムリーかつ安心・安全で質の高い医療を提供できる診療看護師(NP)になれるよう努力していきます。

【NP5期 芳賀光雄】

 私は今まで慢性期や在宅の看護師として働いていました。将来的には在宅で活躍できるNPを目指し、日々研修で臨床推論や特定行為を学んでいます。聖マリアンナ医科大学病院を選んだきっかけは、研修ローテーションが確立されているからです。2年間かけて様々な診療科をローテーションすることで、急性期における全身管理からターミナルケアやcommon diseaseの内科管理までを学んでいきます。私の場合、慢性期の看護経験から慢性期病棟で看護研修を開始しました。今年度から腎臓内科・呼吸器内科・代謝内科のローテーションを新しく創設して頂き、個人の背景やスキルに合わせた研修先を考えてくれています。
 現在私は循環器内科で研修を行っています。循環器内科は病態に応じて5つの班に分かれており、私は心不全班に所属しています。外来や検査などで医師が不在になることが多く、主に後期研修医・専攻医とNPで病棟管理を行います。業務の流れとしては、朝のカルテ診で担当患者の情報を共有し治療戦略を立て、夕回診で治療反応を確認し、チームで治療戦略を練り直します。NPもチームの一員として医師と一緒に、患者のプレゼンテーション・カルテ記載・指示出し・処置・代行処方等を行います。また降圧剤や利尿薬の調整や電解質の補正、PICC挿入等の特定行為が多く、実施させて頂く機会を頂いています。
 指導医の先生方や看護師もNP活動にとても協力的で研修環境はどの施設よりも整っていると自負しています。もし当院への入職を迷われている方がいましたら、まずは見学に来ていただき実際の雰囲気を肌で感じて見て下さい。


【 NP5期 松本佳代 】

2021年に聖マリアンナ医科大学病院へ入職し、現在NP研修2年目です。当法人のNP研修は2年間あり、法人内の3つの病院で研修を行なっています。私の研修スケジュールは下記の通りです。

4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
1年目
看護部研修 こどもセンター
本 院 NICU
本 院 小児科
本 院 小児外科 
2年目
多摩病院 総合診療内科
本院 救命
西部病院 NICU
西部病院 小児科
選定中

 私は看護師としての臨床経験は小児科・NICUが主であり、NP資格もプライマリ・ケア(小児)領域で認定を受けています。そのため自身の強い希望により、小児領域に重点をおいた内容で、NP研修のスケジュールを組んでいただいています。
同じ小児科とは言っても、3つの病院では病院の設備や規模・そこで可能な治療・対象とする疾患や患児の重症度・マンパワーなどが異なっており、その部署ごとの学びがあります。またNPが担う業務に対するニーズも部署ごとに違いがあります。
   NP研修では、研修先診療科のスケジュールに則って1日の業務を行います。朝の回診、チームの担当患者の状態把握および指示出し、処置などを指導医と共に行います。例えば気切カニューレ交換や胃ろうボタンの交換など、看護師特定行為の範疇の処置であれば、医師の包括的指示のもと手順書に沿ってNPが単独で処置を行うこともあります。また、医師のカンファレンスで患者さんのプレゼンテーションを行なったり、状況によっては病棟看護師のカンファレンスに参加し、患者について情報共有を行なうなどの活動をしています。鎮静中や呼吸器管理中の検査への付き添いなど、看護師のみで対応するのが不安だという場面で医師に代わりNPが同行することもあります。
当法人でのNP研修は、研修生個々の希望や目指すNP像に沿う形で研修を受けることが可能だと思います。聖マリアンナのNP研修に興味がある方はぜひ見学にいらしてください!一緒に働ける日を楽しみにしています。


【心臓血管外科ローテーション中の特定行為実施件数の1例】

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【心臓血管外科ローテーション中のNPの実際の風景】

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【特定行為看護師研修生(2022):2期 高橋望美】

① 看護師特定行為21区分38行為研修を志望したきっかけ
これまで11年間の看護師経験があり、手術室を6年、整形病棟を4年(消化器半年)、ハートセンター1年で働いていました。日々の看護業務を行うにあたり、看護師の発見・気付きから素早く早期診断・早期治療に繋げることが可能で、患者さんの苦痛軽減になると考えました。特定行為を習得することがそれらに繋がると思い、当院で21区分38行為の特定行為研修を受けることにしました。

② 研修を通しての学びと今後の課題
特定行為研修が始まると知識・経験不足を痛感し講義についていくのがやっとでした。特に救急領域の知識が不足しており、講義後も自宅での勉強に励みましたが、ICLS研修に参加するなど初期診療のやりがい・楽しさも同時に感じることが出来ました。
座学での講義が終了し実習に臨みましたが、講義で学んだ知識を実臨床で応用していく難しさを実感しながらも各診療科の先生方に熱心にご指導いただき、実り多い実習となりました。また、「特定行為看護師は何が出来るのか、どういう存在なのか」ということを医師・看護師・薬剤師等の他職種に認知してもらう必要がありました。そこで、他職種とのコミュニケーションを積極的に取ることで「特定行為看護師とは何が出来るのか、どういう存在なのか」を知ってもらうよう努力しました。また、患者さんにも「特定行為看護師」を知ってもらうために、患者さんやその家族とも積極的に関わり「特定行為看護師」の周知に努めました。1年間の研修が修了して、患者さんの負担を軽減できる直接的な関わりが特定行為看護師には出来るのではないかと実感しております。また、医師の医学的視点を持ちながら看護師の包括的な視点を持つようになったことから、これまでは考えることのなかった患者さんの退院後の生活指導も出来るのではないかと考えております。
特定行為研修修了後は2年間の各診療科研修を行い、更なる知識および技術の獲得をしていきます。「特定行為看護師」として、これまでの研修で学んだ知識や技術をチーム医療の中で発揮することで貢献していきたいと思います。

看護師特定行為研修センターについてかこちら↓
看護師特定行為研修センター │ 聖マリアンナ医科大学病院 (marianna-u.ac.jp)

5.研修修了後の働き方

【脳神経外科(2022):NP2期 清野奈々恵】

 大学院卒業後に2年間の当院独自の診療看護師研修を終え、2020年度より脳神経外科の診療業務に従事しています。
脳神経外科領域での診療看護師の診療対応は、「病棟対応」「緊急対応」「脳血管内撮影・治療対応」の3つに大別されます。
病棟対応では、脳外科特有の疾病や術後管理と感染症や貧血、電解質などの一般内科的な全身管理を行っています。
緊急対応では、患者搬送から状態安定までの直接介助と全身管理を行っています。
脳血管内撮影・治療対応では、入院から退院までの一貫した術前・術中・術後の管理を行っています。
世間一般的な診療看護師のイメージは、「特定行為や医行為ができる看護師」「医師と看護師の中間職」といったものが多いと思います。しかし、実際はそうではありません。
臨床の現場では医師や看護師だけでなく、薬剤師や理学療法師・作業療法師・言語聴覚療法師、栄養師、放射線技師、検査技師、ソーシャルワーカーなどあらゆる職種との連携が必要となります。その連携を円滑にすることで、患者・家族への医療や看護の提供も円滑になります。その連携の中心を担うことが、診療看護師の大きな役割の1つでもあると思います。あらゆる職種との連携のためには、あらゆる多様性と価値観を受け入れられる柔軟性とそれを理解しようとする姿勢が必要不可欠です。
この4年間の診療看護師の実務経験を通して、診療看護師に求められる能力は、医学的知識や技術以上に「コミュニケーション能力」と「ネゴシエーション能力」であることを痛感しました。診療看護師という職種が「あらゆる職種と連携して、患者を看る・診ることができる看護師」のことを示す職種となれるように今後も精進していきていと思います。


【救命科(2022):NP4期 齋藤洋平】

 私は2020年に入職し今年で診療看護師(NP)として3年目で、2022年4月より救命センターに出向となりました。
救命センターでのNPの仕事内容は、受け持ち患者の治療方針の共有・決定・変更などのマネジメントを指導医の指示の下で行います。ICU・HCUに入院している患者を受け持つため中等症〜重症患者が多く、採血および画像結果確認・身体診察・問診・ベッドサイドエコーなどを回診前に予め行います。そして回診時に治療方針・治療内容を指導医にプレゼンテーションし、ディスカッションを経てその日のTo doを行います。また、Aline挿入やPICC挿入、人工呼吸器設定変更などの特定行為も指導医の指示の下で行い、夕方から受け持ち患者について夜勤帯勤務者へ申し送りを行い、日勤帯の仕事が終了します。
勤務時間内の空いた時間に指導医の先生方からレクチャーを受けたり、オンラインでの勉強会に参加するなど学ぶ機会に恵まれており勉強するのにとても良い環境です。
診療看護師として医師および看護師をはじめとした多職種とのコミュニケーションを密に行うことで、チーム医療が円滑に進むように努めています。また、これまで培った看護の経験から、看護の視点持ち合わせて日々の業務に取り組んでおります。

【聖マリアンナ医科大学西部病院 救命科(2022):NP4期 阿部浩幸】

 当院では現在3名のNPが救命センターで勤務しておりICU、HCU、救急外来で医師と共に診療、看護を担当しております。当院の特徴としては多職種との協力体制が整っており、いつでも相談できる環境であると感じています。
私が西部病院で経験したエピソードを紹介します。ICU滞在期間が長期となりせん妄症状が強く、挿管中もせん妄コントロールに難渋していた患者さんがいました。抜管翌日より、NP、リハビリスタッフ、看護師、指導医と共に車椅子へ移乗し積極的にリハビリテーション、環境調整を行いました。結果としてせん妄症状は落ち着き、再挿管を回避できました。当たり前のようなエピソードですが抜管を行うためのマネージメントを連日行い、抜管後も再挿管、せん妄離脱に向けた介入がチーム全体で行えた結果だと考えています。マネージメントには身体診察はもちろん、エコー評価や検査結果の解釈などが含まれます。これらの結果からアセスメントを行い指導医へプレゼンテーション後に、必要であれば特定行為を含む処置介入を行います。私はこの患者さんに早期リハビリテーションが必要だと判断したとともに、離床が可能かアセスメントを行いました。指導医とディスカッションを行い離床する方針とし、その後多職種との調整を行いました。多職種との調整も私たちのNPの大切な役割です。患者さんの状況や起こりうるリスクなどを現場レベルに応じて伝え、時間調整等をおこないます。これらは看護師としての経験があるからこそできるものだと私は感じています。
 この患者さんは抜管までの時間は長くかかってしまいしたが、その後の多職種の早期介入により数日で救命センターより退室することができました。多職種との協働が確立している西部病院ならではだと考えています。このような介入をNPが中心となって行うことで最終的には滞在日数や合併症の減少に繋がると感じています。
 また、西部病院では特定看護師との連携・協働を大切にしています。西部病院の特定看護師は、病院内の各診療科を3か月毎にローテーションしております。各科のニーズを把握し私達NPも連携・協働し今後はNPと特定看護師とで各診療科で必要とされる特定行為などに対応していくため準備を進めています。
中規模な病院だからこそ求められるニーズがあり、NPという職種が輝ける職場であると私たちは感じています。

【川崎市立多摩病院(2022):NP3期 伊田穂乃香】

 当院では現在3名の診療看護師が勤務しており、総合診療内科、循環器内科、消化器内科で業務に従事しています。
当該科での通常業務の他に、心不全外来や重症患者をいち早くピックアップするためのEWS/RRSシステムの運用検討、内視鏡治療の介助者、ICLS等の院内教育での指導役など自分たちのスキルで活躍できる場を模索し、活動範囲を徐々に広げつつあります。
また、NP研修生、特定行為看護師研修生、大学院からのNP学生が研修に訪れており、日々忙しくも学びの多い時間を過ごしています。
 当院の看護部理念には「コア」と「ケア」そして「キュア」の3つの柱があります。
我々診療看護師は看護のこころである「ケア」と医学知識に基づいた特定行為等の治療に携わる「キュア」の2つの視点をもって患者1人1人にとって最適な医療とは何かという「コア」をとらえられる新たな存在として将来の医療へ貢献することを目標にしています。
 まだまだ課題も多くありますが、日々の業務の中で自分たちが学び得てきた知識や経験、技術をどのように現場で生かし、還元できるかを共に働く他職種の方々と話し合いながら、より質が高く個別性のある医療を提供していけるよう今後も努力していきたいと思います。

6.当院NPの活動

RRTチーム活動

 

TRNP勉強会

 

 

8.入職希望・見学希望

診療看護師(NP)インターンシップ